(原因と克服方法の解説)
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更新日 2021.05.09
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1.はじめに
生唾を飲み込むといった言葉もありますが、人前で唾を飲み込む行為は他人にあまり良い印象を与えないと言われています。
そして、このために人前で唾を飲み込む時の音が側にいる人に分かり、変に思われていると感じ悩んでしまう人も多いものなのです。
これが神経症の一種である唾液恐怖症と言われているものなのですが、このページでは、この悩みついて解説させて頂きます。
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2.唾液恐怖症とは
これは唾を飲み込む時の音が人に伝わり嫌がられていると感じてしまう悩みです。
森田療法では唾恐怖と呼ばれることが多いです。
なお、人によっては唾を飲み込む時に喉仏が動くことで人から変に思われると感じ、これが気になってしまう場合もあります。
また、唾を飲み込むという行為自体よりも口の中に溜まる唾液が気になってしまうという場合もあります。
中には普通は無意識に行っている唾を飲み込む行為や息をする行為を意識してしまうことで、常にこれが気になってしまうという人もいます。
いずれにしても、この唾液恐怖症も一つの観念にとらわれてしまうという点で、強迫神経症に含まれます。
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3.唾液恐怖症かどうかのチェック
具体的にどういう形で起こるかということを内容が重複している部分もあると思いますが、思いつくまま箇条書きにしてまとめてみました。
これらの中に、もし思い当たるものがあれば、あなたの悩みは唾液恐怖症の可能性が高くなると思います。
1)人前でつばを飲み込むときの音が気になってしまう。
2)唾の音が人に聞こえると思うと余計に唾液が出る。
3)緊張して思わず唾をゴックンと飲み込んでしまう。
4)授業中に唾が出てきて、飲み込むと音が鳴って恥ずかしい。
5)唾液が口の中に大量にたまり辛い。
6)唾のことばかり気になり勉強に集中できない。
7)唾を飲み込む時に喉仏が動き、嫌がられているように感じる。
8)唾を飲み込む音が周りの人を不快にしているようで心配。
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4.唾液恐怖症に影響すること
例えば、唾が口の中に溜まり、いつ飲み込んだら良いかと、これが気になってしまうのも唾液恐怖症の場合の特徴ですが、これは一人でいる時には起こらないことが多いものなのです。
つまり、周りに人がいるという状況の下で起こってくる悩みだと言えるのです。
こういう意味で一見、喉とか口の中の異常のように思えますが、実際は人から変に思われたらどうしようという不安から来る症状ということになるのです。
そして、このように人目が異常に気になってしまうというのは、人から良く思われたいという欲求が人一倍強いからだと言えるのです。
そして、こういう欲求の強さというのは神経質性格の特徴の1つになることなのです。
ですから唾液恐怖症にも神経質性格の特徴を持っているかどうかが大きく影響してくると言って良いと思います。
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5.私の体験から唾液恐怖症について言えること
私も高校の頃、一時、口の中に溜まる唾のことが気になった時期があります。
唾を飲み込む時の音や喉が動くことで側にいるクラスメートから変に思われるのではないかと感じ、かえって口の中に唾が溜まりやすくなったことがあります。
ただ、私の場合は、これは一時的なものだったと思います。
そのころの私は赤面や頻尿の悩みがあり、この方に注意が向いていたために唾のことにとらわれずに済んだのだと思います。
「人間は同時に2つのことに注意を集中することは出来ない」という言葉もありますが、何か別のことに注意が向いていれば唾には注意が集中せず、これにとらわれることはないのだと思います。
こういう意味で、唾液恐怖症に悩むようになるかどうかは他に悩みがなく、たまたま、何らかのキッカケで唾の方に注意が向くような出来事が起こるかどうかで決まってくるのではないかと思います。
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6.原因
唾液恐怖症になるかどうかは基本的には心配症や完全欲の強さといった特徴を持つ神経質性格を持っているかどうかで決まってきます。
さきほども書かせて頂きましたが、人から良く思われたいという欲求が強ければ強いほど人から変に思われたらどうしようという不安も強くなるものなのです。
そして、こういう欲求の強さというのは神経質性格の特徴から来るものなのです。
ただ、神経質性格の人間が全て唾のことに悩むようになる訳ではありません。
それではなぜ、唾のことに悩むようになるかということになりますが、これは、その人の価値観というか物の考え方が影響するのだと思います。
つまり、人前で唾を飲み込むことが人から変に思われる恥ずかしいことなんだという考えがあると、どうしても、唾のことにとらわれやすくなるものなのです。
また、唾のことが気になってしまう時に、これは良くないことだと考え無理に気にしないようにしようとしたり、気を紛らわせるための行動を取ってしまうことが多いものなのです。
しかし、これは森田療法で言っている「気分本位の行動」ということになり、一時的には楽になれたとしても長い目で見ると、ますます唾に対する「とらわれ」を強くしてしまうことになるのです。
ですから、神経質性格の特徴を持った人が誤った考えに引きずられて「気分本位の行動」を取り続けてしまうことが原因だと言って良いと思います。
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7.克服方法
唾に対する「とらわれ」というのは体の異常から来ることではありませんから、唾のことが気になりながらも、これに引きずられずに目の前の「なすべきこと」をこなしていくということが大切になってきます。
これが森田療法で言っている目的本位の行動ということになるのですが、森田療法の考え方を参考にしながら目的本位の行動を積み重ねていくと「行きつ戻りつ」しながらも唾に対する「とらわれ」は薄れてくるものなのです。
そして、この結果として唾液恐怖症を克服することが出来るのです。