(原因、克服方法の解説)
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更新日 2024.03.09
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1.概要説明
対人恐怖症は最近は社会不安障害とか社交不安障害、社交不安症と呼ばれることが多くなりましたが、一言で言うと「人が苦手で人と話すのが怖い悩み」ということになります。
つまり、人前で緊張し思うように話が出来なくなってしまうとか、顔が赤くなってしまう、人の視線が気になってしまう、といった形で現れてくる症状です。
そして、いずれも人から変に思われるのではないかとか、嫌われたらどうしようといった対人関係の不安が根底にあると言えます。
つまり、人見知りをするとか、人に気を使うということは、誰にでも多かれ少なかれあるものですが、これが過度に強くなり「とらわれ」が出来ている状態が対人恐怖症に悩んでいる状態だと言って良いとと思います。
そして、対人恐怖症に悩んでいる時は人間関係が苦手になったり、人付き合いが不安になってしまうことが多いものです。
また、対人恐怖症を改善するために本を読んだり民間療法に頼ったり宗教に救いを求めたりすることも多いように思います。
しかし、対人恐怖症の場合は他の病気や怪我とは異なり症状だけに目を向け、これを治そうとしてしまうと、逆に、かえって症状を強くしてしまうものなのです。
なお、最近は対人恐怖症の場合でも病院で診てもらうと、社会不安障害などと診断され薬で治療されることが多くなってきたように感じます。
また、最近、テレビや新聞などのマスコミで目にすることの多くなったコミュ障やアスペルガー症候群と言われているものの中には対人恐怖症の場合が、かなり含まれているように思います。
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2.症状のチェック
対人恐怖症の主な症状をまとめると下記のようになります。
これらを参考にして、ご自分の悩みが当てはまるかどうかをチェックしてみるのも良いと思います。
(具体的な症状)
1.赤面症:顔が赤くなることで悩む
2.視線恐怖:人目が気になる
3.劣等感:内気な性格が恥ずかしい
4.書痙:字を書く時に手が震える
5.震え恐怖:大勢の人前で足や声が震える
6.笑顔恐怖症:笑った時に顔が引きつる
7.表情恐怖:自分の表情が気になってしまう
8.醜形恐怖症:自分の顔だちや体が醜いと思い込み悩む
9.多汗症:人前で汗が異常に出てしまう
10.正視恐怖症:自分の視線が相手を不愉快にすると感じ悩む
11.吃音恐怖:人前でどもってしまう
12.雑談恐怖症:仕事以外の会話になると話せなくなる
13.おなら恐怖:おならのために周りの人から嫌がられていると感じる
14.唾液恐怖症唾を飲み込む時の音が人に聞こえてしまう -
3.原因
対人恐怖症にどうしてなるかということですが、森田療法では2つの要因があると言っています。
1つは「外的要因」と言われているものであり、学校の授業中に突然指名され発表する時に声が震えてしまったというような、恥ずかしくショックな出来事が「キッカケ」になることが多いものなのです。
そして、もう1つは「内的要因」と言われているものですが、不安や緊張などの感情や、赤面や震えなどの症状に対する「誤った考え方」というものが挙げられます。
つまり、人前で緊張したり声が震えてしまうことを、人から変に思われる恥ずかしいことであり、絶対にあってはならないことだという「誤った考え方」があると、かえって緊張や声の震えの症状の方に注意が向いてしまうことになるのです。
そして、この結果、注意と症状の悪循環が起こり、対人恐怖症の症状を、ますます強くしてしまうものなのです。
そして、こういう「誤った考え方」や認識は神経質性格の特徴を持っている人に起こりやすいものなのです。
ですから、対人恐怖症の症状は「外的要因」が「キッカケ」になり、神経質性格や感情や症状に対する「誤った考え方」などの「内的要因」によって、ますます強くしてしまうと考えて良いと思います。
このため、この2つが対人恐怖症の原因だと言って良いと思います。
つまり、脳とか神経の異常が原因ではないのです。
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4.改善と克服のための方法
先ほども書かせて頂きましたが、今は病院などに行くと対人恐怖症の場合でも薬による対応をされるのが一般的になっていると思います。
しかし、原因のところでも書きましたが対人恐怖症は注意と症状の悪循環によって「とらわれ」が出来、この結果として悩みがますます強くなるものなのです。
ですから、いくら薬を飲んで強制的に不安や緊張を感じにくくしても、こういう解決方法では根本的には治らないものなのです。
つまり、対人恐怖症に悩んでいる時は人間関係に伴う緊張や不安を感じて当然の時でも、これを異常なものとか恥ずかしいことと考え邪魔者扱いし排除しようとしていることが多いものです。
しかし、このために、ますます緊張や不安を強くしてしまうという「悪循環」に陥っているものなのです。
ですから、まず、今は対人恐怖症に悩んでいる最中だから人前での緊張や不安を感じて当然なんだと受け止めるようにしていくのが第一歩になると思います。
そして、この上で目の前の「なすべきこと」を1つ1つ、きちんとこなすようにしていくと良いと言えるのです。
つまり、これが森田療法で言っている目的本位の行動ということになるのです。
そして、このように目的本位に行動していく中で、その時の緊張や不安を「あるがまま」に受け止めることが出来るようになるものなのです。
そして、この積み重ねの中で少しずつ対人恐怖症の症状が改善してくるものなのです。
つまり、目的本位や「あるがまま」など、森田療法の考えを意識しながら行動していく中で対人関係の緊張や不安が少しずつ小さくなってくるということなのです。
そして、この積み重ねの結果として対人恐怖症の症状を克服することが出来るものなのです。
ですから、薬を飲まなくても森田療法の学習をしていく中で、充分、対人恐怖症を克服することが出来ると言えるのです。