(対処法と克服のための説明)
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<要約>
予期不安は、またパニック発作が起こったらどうしようとか、人から変に思われたらどうしようとか、眠れなかったらどうしようと、これから先のことに対して不安を感じる症状のことを言います。
そして、これは神経症の場合の典型的な特徴になります。
つまり、パニック障害や対人恐怖症、不眠症などの神経症に悩んでいる時に共通して見られる症状なのです。 -
1.はじめに
予期不安は神経症に悩んでいる時に共通して見られる症状になりますが、特にパニック障害(不安神経症)の場合が良く知られています。
電車に乗って、また、あの時のようなパニック発作(動悸や息苦しさなど)が起こり、苦しい状態になったらどうしようという心理的な不安を感じてしまうものなのです。
そして、この予期不安のために電車や飛行機といった乗り物に乗れなくなったり、外出自体が困難になっている人も多いものなのです。
これは森田療法では外出恐怖、認知行動療法では広場恐怖と呼ばれている症状になります。
しかし、このように予期不安に引きずられ乗り物に乗ることや外出を避けている間は、なかなかパニック障害の症状は解消せず、良い方向に向かないものなのです。
また、抑うつ神経症の場合の予期不安は、これから先、自分の将来はどうなってしまうのだろうかとか、会社が倒産したり、リストラにあって仕事を失ってしまうのではないか、といった形で、どうなるか分からない将来に対して心配してしまうことが多いものなのです。
また、対人恐怖症の場合の予期不安は、人前でまた顔が赤くなったり、手が震えたりして周りの人から変に思われたらどうしようと心配になってしまうなのです。
そして、人と上手く付き合っていけないことで、自分は社会の中で生きていけないのではないかと将来の不安を感じてしまうことが多いように思います。
また、強迫神経症の中の疾病恐怖症とか精神病恐怖と言われるものは、自分がガンとか精神病といった重大な病気になってしまうのではないかと予期不安を感じているものなのです。
また、不眠症は神経症に関わらず、器質的なうつ病など他の原因でも起こってきますが、神経症から起こる場合は、今夜もまた眠れなかったらどうしようという予期不安を感じるものなのです。
つまり、この予期不安があるかどうかで神経症の「とらわれ」が原因になっている不眠症かどうかの判断が出来ると言って良いと思います。
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2.予期不安とは
要約のところでも書かせて頂きましたが、予期不安は、またパニック発作が起こったらどうしようとか、人から変に思われたらどうしようとか、眠れなかったらどうしようと、これから先のことに対して不安を感じる症状のことを言います。
そして、これは神経症の場合の特徴だと言って良いと思います。
パニック障害や対人恐怖症、不眠症などの中には、器質的なうつ病や統合失調症といった精神的な病気が原因になっている場合もあります。
ですから、こういう精神的な病気が原因かどうかの見極めが非常に大切になってくると思います。
そして、この見極めのための1つのチェックポイントになるのが予期不安の症状があるかどうかなのです。
つまり、不眠症の場合などでも、器質的なうつ病などが原因になっている場合は、今夜もまた眠れなかったらどうしようという予期不安を感じることは少ないものなのです。
ですから、こういう予期不安を感じるかどうかで神経症が原因になっている症状かどうかを判断することが出来ると思います。
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3.ある方の体験例
予期不安に悩んでいる人の一例を紹介させて頂きますと、下記のようになります。
(予期不安に悩むMさんの例)ある大手の会社に勤めるサラリーマンであるMさんは通勤途中の満員電車の中で心臓のドキドキや息苦しさを感じ、パニックになった経験がありました。
そして、この経験以降、また、心臓のドキドキや息苦しさを感じ、パニックになったらどうしようと不安を感じ、電車などの乗り物に、思うように乗れないということで悩んでいました。
しかし、会社の仕事はきちんとこなしていましたので、上司からの評価も良く、いわゆる出世コースに乗っている状態でした。
しかし、出張などで電車や飛行機に乗るような機会があると、どうしても予期不安を感じてしまい、辛い思いをしながら出張をこなす状況でした。こういう辛く苦しい状態が数年続いた後、今の状態を何とかしなければと思うようになり、思い切って精神科のクリニックに行きました。
精神科のクリニックでは、これは、うつ病から来ている症状だと言われ、SSRIを初めとした何種類かの薬を処方されました。
Mさんは藁をもつかむ気持ちで薬を飲み始めました。
そして、薬を飲み始めてから2週間くらい経つと、予期不安を感じることが少なくなり、電車にも楽に乗れるようになりました。
Mさんは、これで助かったと、胸をなでおろす気持ちになっていました。
しかし、この反面、だるさや眠気を感じやすくなり、仕事に対する集中力が衰えてくるようになりました。
そして、不安を感じにくくなったのは良いのですが、仕事中に眠気を感じることが多くなり、単純なミスを犯してしまうことが増えてしまいました。
また、夜は逆に思うように眠れなくなり、睡眠導入剤を欠かすことが出来なくなってしまいました。
そして、一時は心臓のドキドキや息苦しさの症状が治まっていたのですが、数ヶ月経った頃には、また、同じ症状を感じることが増えてきてしまいました。
このためMさんは困ってしまい、インターネットで色々調べた結果、あるサプリメントがパニック障害に効果があるということを知り、これを取り寄せ、飲むことにしました。
病院の薬とサプリメントの両方を飲むようになり、いくらか、症状が治まるのを感じましたが、サプリメントが高価なために生活費を切り詰めなければならない状況になりました。
また、数ヶ月経った頃には、また、サプリメントが効いているのかどうかがハッキリしなくなり、電車に乗る前の予期不安を感じることが増えてきてしまいました。このため、以前、インターネットを調べた時に目に留まっていた、MTカウンセリングのことを思い出し、思い切って、これを受けることにしました。
MTカウンセリングを通し、森田療法の学習をしていく中で心臓のドキドキや息苦しさの症状が「死の恐怖」に対する「とらわれ」から来ているということを知り、今までハッキリしなかった原因がハッキリしたように感じました。
そして、心臓のドキドキや息苦しさに対する予期不安は、自分の意志の力では変えることの出来ないものであるということを知りました。
また、心臓のドキドキや息苦しさがどんなに強くても、これによって命に関わるようなことにはならないということも知りました。
そして、この結果、予期不安はそのままに電車に乗るという、森田療法で言っている目的本位の行動を取るようにしていきました。
初めのうちは清水の舞台から飛び降りるような気持ちで電車に乗っていましたが、何度も繰り返していく中で、少しずつ楽になってくるのを感じました。
そして、数ヶ月経った頃には予期不安を感じることも、だいぶ減っているのを自覚できるようになりました。このMさんのように、今は神経症にも関わらず、うつ病と診断されてしまい、薬による治療を受けることになっている人が増えているように思います。
しかし、神経症は脳などの異常から起こる症状ではなく、「とらわれ」という心理的な原因で起こる症状ですから、いくら薬を飲んでも、これでは根本的には治ってこないものなのです。
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4.予期不安の具体的な症状
具体的に、どういう形で症状が現れるかを書かせて頂きます。
これらのチェック項目の中に当てはまるものがあれば、あなたの症状も予期不安の可能性が高くなると思います。
<予期不安かどうかのチェック項目>
1)また、あのパニック発作が襲ってくるのではないか。
2)発作が起こった時に人前で取り乱し、恥をかいたらどうしよう。
3)倒れたりして人に迷惑をかけたらどうしよう。
4)心臓発作が起こって死んでしまったらどうしよう。
5)息苦しさのために気を失ったらどうしよう。
6)車を運転している時にパニック発作が起こり事故を起こしたらどうしよう。
7)一人の時に発作が起こり、誰も助けてくれなかったらどうしよう。
8)発作が起こった時に、その場から抜け出せなかったらどうしよう。
9)発作が起こった時に吐いたりして無様な姿をさらしたらどうしよう。
10)自分の将来はどうなってしまうのだろうか。
11)会社が倒産したり、リストラにあって仕事を失ったらどうしよう。
12)また、批判されたり攻撃されたりイジメられたりしたらどうしよう。
13)また、無視されたらどうしよう。
14)手が震えて周りの人から変に思われたらどうしよう。
15)顔が赤くなり人から避けられたらどうしよう。
16)ガンになったらどうしよう。
17)精神病になったらどうしよう。
18)今夜もまた眠れなかったらどうしよう。
19)頭痛がすると、頭の血管が切れてしまうのではと感じてしまう。
20)心臓に違和感があると、心筋梗塞になったらどうしようと感じる。
21)呼吸がしにくくなると、このまま息が止まるのではと感じる。
いくつかピンと来る項目がありましたか。
自分の悩みの原因が予期不安に当てはまるかどうかを明らかにするためにも、一度、チェックしてみると良いと思います。 -
5.予期不安を伴う主な神経症の症状
神経症の症状の中で特に予期不安が特徴的なものをまとめると下記のようになります。
5-1.パニック障害
この場合は突然の動悸や息苦しさといったパニック発作の症状が特徴になりますが、この際に、また、同じように動悸や息苦しさが起こり、辛い思いをしたらどうしようと予期不安を感じることが多いものです。
なお、パニック障害は元々は不安神経症と言われていた症状であり、同じものだと考えて良いと思います。5-2.過呼吸症候群
これは呼吸困難や過呼吸のために気を失ったり、死んでしまったらどうしようと不安になってしまう症状ですが、この場合も、症状が強烈なために、また、同じように呼吸困難や過呼吸のために辛い思いをしたらどうしようと予期不安を感じやすいものなのです。5-3.心臓神経症
胸の痛みやバクバク感を感じ、このまま心臓発作で倒れてしまったらどうしようと不安になってしまうのが、この症状ですが、この場合も症状が突然起こり、パニックになりやすいものです。
そして、このために、また、胸の痛みやバクバクが起こったらどうしようと予期不安を感じやすいものです。5-4.乗り物恐怖
これは電車や車、飛行機などの乗り物に乗っている時にパニック発作の症状が起こるものですが、大きな分類で言えば不安神経症の一種になります。
不安神経症の中でも最もポピュラーな症状だと言って良いと思います。
そして、この場合は予期不安の強さのために電車や車、飛行機といった乗り物に乗らなければならない時でも、これを避けてしまうことが多いものなのです。
しかし、予期不安に引きずられて必要な乗り物に乗るのを避けてしまうと、これは森田療法で言っている気分本位の行動ということになり、一時的には楽が出来たとしても、長い目で見ると、ますます予期不安を強くすることになってしまうものなのです。5-5.留守番恐怖
対人恐怖の場合などであれば、家に一人でいる時は症状を感じる事がなく、落ち着けるものなのですが、この症状の場合は、全く逆で、周りに人がいないと、パニック発作が起こった時に助けてもらえないと感じてしまうものなのです。
そして、このために、一人で留守番をしている時などに予期不安を感じてしまうということになるのです。
また、家にいる時だけではなく、出かける時でも、家族など信頼できる人と一緒でないと不安になってしまうことが多いものです。
そして、このため、会社に行く時でも奥さんと一緒でないと出勤できないという状態になっている人もいるものなのです。
この場合は外出恐怖と言われることが多いです。5-6.閉所恐怖症
エレベータの中など何かあった時にすぐに抜け出すことが出来ないような状況に置かれた時に不安になってしまうのが、この症状になります。
ですから、エレベーターに限らず、遊園地のゴンドラとかCTやMRIといった病院の検査機械に入っている時などでも不安になってしまうものです。
このため、人間ドックや健康診断の前などに予期不安を感じることも多いと思います。5-7.高所恐怖症
山に登った時に渡る機会の多い吊り橋を渡るのが怖いとか、高層ビルなどの上層階に行くのが怖いと感じるのが、この症状になります。
なお、乗り物恐怖の一種である飛行機恐怖症の場合は、この高所恐怖症の傾向も強いのではないかと思います。
そして、この場合も、上に書かせて頂いたような高い所に上ることが予想されるような時に予期不安を感じやすいものなのです。5-8.嘔吐恐怖症
これは吐き気恐怖と言われることもありますが、外食などをする時に食べた物を吐いてしまうのではないかと予期不安を感じることで、思うように食事を取ることが出来なくなってしまうという症状になります。
過食症の場合などは実際に吐いてしまうことが多いですが、この症状の場合は、実際に吐くことはほとんどなく、吐いてしまったらどうしようと予期不安を感じるところに特徴があると言って良いと思います。5-9.心配性
これは神経質性格の特徴の1つである心配性の状態が過度になった状態だと言っても良いと思います。
つまり、これから先のことを色々考えてしまい、心配になってしまうという症状なのです。
ですから、この症状自体が予期不安だと言っても良いと思います。
将来、どんなことが起こるかは誰にも分からないことなのですが、私も含めて神経質性格の特徴を持っている人の場合は、この事実をなかなか自覚することが出来ないということになるのではないかと思います。
これは観念的とか完全欲の強さといった他の神経質性格の特徴が影響しているのだと思います。
つまり、これらの特徴のために、どうしてもこれから先のことに対して心配になり、予期不安を感じやすくなるのだと思います。5-10.抑うつ神経症
この症状は、今、精神科や心療内科の病院にかかり、うつ病と診断されている人の中の、かなりの人に当てはまるものではないかと思います。
躁うつ病や器質的なうつ病から起こる抑うつ感や倦怠感の場合と神経症の「とらわれ」から起こる抑うつ感や倦怠感の場合が、今はごっちゃになっているように感じます。
そして、このために、本来、薬を飲むよりも森田療法の学習などで対応していった方が治りが早い、うつ状態の人が何年にも渡って薬漬け状態になっていることが増えているように思います。
ですから、器質的なうつ病なのか、抑うつ神経症なのかの判断をきちんとしていく事が大切になるのですが、この際のポイントになるのが予期不安だと言って良いのではないかと思います。
つまり、自分の将来がどうなってしまうのだろうかと予期不安を感じるような場合は器質的なうつ病よりも、抑うつ神経症の可能性の方が高くなるのだと思います。5-11.対人恐怖症
忘年会などで、また自分だけ浮いてしまったらどうしようと、こういう形の予期不安を感じるのが対人恐怖症の場合の特徴になると思います。
対人恐怖症の場合はパニック障害の場合のように強烈な不安は感じないものですが、じわじわとした予期不安を感じるものなのです。
そして、これは強烈な不安と同様に、非常に辛いものなのです。5-12.書痙
結婚式や葬式などの記帳の際に手が震えて自分の名前を書く事が出来ないと悩むのが、この症状になります。
そして、この場合も、また、手が震えたらどうしようと予期不安を感じることが多いものなのです。
そして、このために、サインをすることから逃げたり、奥さんなどに代わりにサインをしてもらうという形になっている人も多いものです。
しかし、これらも予期不安に引きずられた気分本位の行動ということになってしまいますから、一時的には楽になれたとしても、長い目で見ると、ますます書痙の症状を強くすることになってしまうのです。5-13.赤面症
発表会の時に、また顔が赤くなって恥ずかしい思いをしたらどうしようと、こういう形での予期不安が起こってくることも多いものです。
そして、この場合の元になっている症状が赤面症ということになります。
この症状も対人恐怖症の場合に良く見られる症状になりますが、悩んでいる人が多いために、赤面症という別の名前がついていると言って良いと思います。5-14.疾病恐怖症
ガンとかエイズといった命に関わるような重大な病気になったらどうしようと予期不安を感じてしまうのが、この症状の特徴になります。
こういう意味で疾病恐怖症の場合は症状そのものが予期不安になると言っても良いと思います。5-15.精神病恐怖
やる気が起きず、憂鬱になってしまう時に、自分がうつ病になってしまったのではないかと悩むのが、この症状になります。
今は憂鬱感や意欲低下といった症状で病院にかかると、本当にうつ病と診断されてしまうことが多いために、余計に予期不安を感じやすくなっているのではないかと思います。
また、対人恐怖が重くなると統合失調症になるといった誤った医学情報がマスコミなどで流されている結果、余計に精神病に対する予期不安を強く感じやすくなっているのではないかと思います。
しかし、自分がうつ病や統合失調症などの精神病になるのではないかと予期不安を感じるような人は神経症の人であって、実際に精神病になることはないものなのです。5-16.不眠症
良く眠れなかった次の日などに、また今夜も眠れなかったらどうしようと感じるのが、この症状の場合の予期不安ということになります。
1の「はじめに」のところでも書かせて頂きましたが、同じ不眠症でも予期不安を強く感じる場合は神経症が原因になっている可能性が高くなるのです。
つまり、器質的なうつ病などから来る不眠症の場合は、それほど予期不安を強く感じることはないと言って良いと思います。 -
6.予期不安に影響すると思われる神経症の症状
下記の症状は予期不安を起こしやすくするものだと思います。
6-1.劣等感
これは神経症に悩んでいる時に共通して見られるものです。
「劣等感的投射」と言われている言葉もあるように、神経症に悩んでいる時は周りの人が自分の症状に気付き、嫌な思いをしているとか変に思っていると感じてしまうものなのです。
そして、このために、また会社に行って、みんなから白い目で見られたらどうしようといった予期不安を感じやすくなるものなのです。
ですから、この場合はパニック障害や不安神経症に伴う予期不安よりも、対人恐怖症に伴う予期不安が起こりやすくなると言って良いと思います。6-2.対人不安
あがり症や対人恐怖に悩んでいる時に誰もが感じるのが、この症状だと言って良いと思います。
また、人前で緊張し、変に思われたらどうしようと心配になってしまうのが、対人不安だと言って良いと思います。
ですから、これは、人間に対する予期不安という見方も出来ると思います。
つまり、周りの人から変に思われたり、嫌われたらどうしようと予期不安を感じる場合が、この症状になるのだと思います。6-3.人見知り
内向的で恥ずかしがり屋な傾向の強い神経質性格の特徴を持った人の場合は、小さな子供の頃から人見知りをしやすいものだと思います。
しかし、思春期を過ぎ、色々な経験を積む事で、少しずつ人見知りは治ってくるのが普通なのですが、中には、こういう順調な経過を辿らず、対人恐怖症の症状を起こすことになってしまう人も多いものなのです。
そして、こうなると、今、上に書かせていただいたような対人不安を初めとする予期不安を感じやすくなってしまうものなのです。6-4.口下手
これも内向的で恥ずかしがり屋なけ以降の強い神経質性格の特徴を持っている人の場合に起こりやすいものだと言って良いと思います。
特に一人っ子とかで家庭内において、あまり会話をする機会が少ない場合、コミュニケーションの技術が身に付かず口下手になることが多いと思います。
この結果、本当は話をしたいのに、劣等感や恥ずかしさが影響して人前で無口になってしまうということも多いと思います。
そして、こういう無口さや口下手に対して、自分自身で納得がいかず、ますます、劣等感を強くし、この結果、対人恐怖症の症状に発展してしまうことが多いと思います。
そして、こうなると、色々な面で予期不安を感じやすくなってしまうものなのです。6-5.呑気症
この症状の中でもお腹が鳴ったり、おならがしたくなる場合は、対人恐怖の傾向が強くなり、また、教室の中でお腹が鳴ってみんなから変に思われたらどうしようとか、バスの中で無意識のうちにおならをしてしまい、周りの人から嫌がられたらどうしようといった予期不安を感じやすくなるものなのです。
呑気症は神経症以外の場合も多いのですが、腹鳴恐怖や、おなら恐怖と言われている神経症の症状に含まれる場合も多いものだと思います。6-6.自律神経失調症
慢性的な頭痛や肩こりなど自分の体調の悪さに「とらわれ」ているのが、この症状の場合の特徴になります。
そして、このために、また頭が痛くなったらどうしようと予期不安を感じ、鎮痛薬が手放せなくなっている人も多いものなのです。
なお、自律神経失調症の場合も神経症の「とらわれ」以外の原因から来ていることもありますから、神経質性格の特徴を持っているかどうかを見極めた上で判断していくことが大切になると思います。 -
7.原因
また辛い思いや、嫌な思いをしたらどうしようと感じてしまうのが予期不安の特徴ですが、これはショックな経験をしたりすれば、誰の心の中にも起こるものだと思います。
しかし、普通は一時的なものであり時間の経過と共に薄れてくるものなのです。
しかし、神経症に伴う予期不安の場合は「とらわれ」が出来ていますから、時間の経過と共に薄れてくるということはないものなのです。
そして、この「とらわれ」は予期不安をあってはならない異常なものだと考え、無理に無くそうとしてしまうところから起こってくるものなのです。
つまり、感じて当然の予期不安を意志の力で排除しようとしてしまうために、逆に、余計に予期不安を強くし、この結果として「とらわれ」が出来てしまうものなのです。
突然の動悸や息苦しさのために、このまま死んでしまうのではないかと感じるようなショックな経験をしたりすることで、これが「キッカケ」になり、また、同じようなことが起こったらどうしようと不安を感じ、この不安を異常なことだと考え、自分の意志の力で無理に無くそうとしてしまうことで、逆にますます不安を強くし、この結果として予期不安に対する「とらわれ」が出来ると言って良いと思います。
ですから、ここに神経症レベルの予期不安の原因があると言って良いと思います。
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8.病院で行なわれている治療
予期不安のために心療内科や精神科の病院に行くと、今は、ほとんどの場合、薬物療法で対応されると思います。
今は予期不安が伴いやすいパニック障害の原因をドーパミンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質のバランスの乱れにあるとする学説が主流になっています。
そして、このために、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤と言われている抗うつ剤の一種)や抗不安薬が処方される場合がほとんどだと思います。
しかし、これらの薬は予期不安だけに目を向け、これを無くそうとするものですから、根本的な克服には結びつかないと思います。
イギリスなどでは、すでにこのことに気付き、薬物療法から認知行動療法に治療方法を切り替えつつあるようです。
つまり、認知行動療法における「暴露療法」と言われているもので予期不安に対処しようとするものです。
これは簡単に言うと、予期不安を感じる対象に直面させ、不安が下がってくるまで回避行動を取らないようにするものです。
つまり、少しなら頑張れるかな、というレベルの予期不安を感じさせて、これが十分下がってくるまで暴露を続けるというものです。
しかし、これも予期不安だけに目を向け、これを無くそうとする方向のものですから、森田療法の立場から見ると、気分本位の誤った方向の努力ということになってしまうと思います。
ですから、思うような効果が得られないのは当然のことなのだと思います。
そして、このために、今はまだ相変わらず薬物療法がメインになっているのだと思います。
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9.森田療法による対処法
4の原因のところでも書かせて頂きましたが、予期不安の原因はドーパミンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質のバランスの乱れではなく「とらわれ」という心理的なメカニズムにあると森田療法においては考えています。
そして、この「とらわれ」は目的本位など森田療法の考え方に沿って毎日の行動の仕方を変えるようにしていく中で、少しずつ薄れてくるものなのです。
予期不安が極端に強く、日常生活が送れないレベルの場合は抗不安薬などの薬を用いることもありますが、辛い思いをしながらも何とか日常生活を遅れている場合は、森田療法の考え方を学習していく中で症状を克服していけるものなのです。